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No.06 Rural Labo 小菅勇太郎さん -地域へのもやもやと向き合う-

2020年9月1日

 今回取材させていただいたのは、Rural Labo(ルーラルラボ)代表で大学一年生の小菅勇太郎さん。

Rural Laboは、地域に関心を持つ人、地域に関わる若者たちが集い、互いに情報や価値観を共有して、学び合える場を作るべく、今年の6月に結成された団体だ。代表の小菅さんをはじめ、ルーラルラボを立ち上げたメンバーが、地域で活動する中で感じた、地域へのもやもや。

この「もやもや」を解決し、「納得感を持って地方に向き合える人を増やす」ことを目的にルーラルラボは活動している。


「僕を含め、ルーラルラボを立ち上げたメンバーは、地域で活動する中で もやもやを感じています。」


地方創生という分野は、曖昧な言葉が多くなってしまうと小菅さんは言う。


「例えば関係人口だったり、都市・地方って分け方は、定義が曖昧なんですよね。僕たちもそういう言葉に逃げがちだと思うんですよ。」

「地域で活動する中で、1つ1つのモヤモヤしている言葉について、しっかりと考えていかないと、地方と表面上の付き合いしかできないと思ったんです。」


 地域に対する「もやもや」を解決すべく、地域で同様の活動をしている人たちを集めて、地域の価値観を共有するのが、Rural Laboのコンセプトであるのだ。

ルーラルラボは、小菅さん自身が、Rural Laboの母団体でもあるRural frontier(ルーラルフロンティア)という会社にインターンしていたことをきっかけに立ち上げられた。Rural frontierは、愛媛県内子町出身の坪田莉來さんという大学生が2019年に立ち上げた会社だ。〝地域の今日をデザインする〟ということをミッションとして掲げ、地方の特産品や商品を会社でブランディングして販売する事業や、地域のプロモーションなども行なっている。

Rural Laboは、その関連事業として「地域の繋がり」を作っていくために活動している団体なのだ。




目次


1.もやもや円卓会議とは

 Rural Laboでは二週間に1回のペースで、もやもや円卓会議というイベントを開催している。このイベントには、主に、地域の課題に関心のある高校生・大学生が参加していて、毎週地域で活躍している人をゲストとして招き、地域のことについて話してもらったり、参加者同士のディスカッションを通して、参加者に地域に対する考えを深めてもらう内容になっている。


「現在、オンライン視聴枠も準備していて、地方にいる人もゲストとして集め、地域に関心のある人のネットワークを全国的に作っていきたいと思っています。あと地域同士で情報の共有をできるようにしていくことで、地域間で交流できるコミュニティーを作っていきたいと思っています。」


初回のイベントでは、愛媛県にある弓削島(ゆげしま)で、地域の文化継承をテーマに活動している人を呼んだり、2回目には、富山県の利賀村(とがむら)で、関係人口作りをしている大学生の方をゲストに迎えた。


「すごい有名な活動をしている人を呼んでいるっていうよりは、実際に地域の中に入って、活動している人たちをできるだけゲストに呼んで、双方向に関われるようなイベントをつくっていきたいと思っています。」





2.地域の活動に参加したきっかけ

 小菅さんの両親は転勤族で、小菅さんが生まれた頃から国内外の各地を転々としていたという。小菅さんが、この分野に関心を持ち始めたきっかけは、自身の生い立ちにあるという。


「東京には4年住んでいます。その前が、モルディブに半年くらい。アラブ首長国連邦に5年、マレーシアに4年。国内だと新潟、広島、愛媛、神奈川に住んでいました。」


国内外の様々な地域で暮らす中で、あることに気づいたという。


「住んでいる街によって、自分のライフスタイルとか幸福度とかにばらつきがあるんですよね。幸福度がばらつく原因が街の作りにあるってことを感じました。」

「例えばマレーシアだと、家族で遊びに行ける場所だったり、公園とかビーチが多くて、街の中心的なところにあるんですよ。そこにいる人たちが重要視しているものがなんなのかっていうのが街の作りにも表れているなと思ったし、逆に街の作りによって、人々が重視するものも変わって影響を受けているなって思ったんです。」


4年前、東京に住むようになってから、まちづくりに関心を持ち、地方創生に関心を持つようになった小菅さん。ワークショップやセミナーなどに参加し、地域のことについて勉強するようになったという。




パワポを使い、イベントの進行役をしている小菅さん(中央)

3.「地域とは何か」を考える

 もやもや円卓会議は、「地域」に対して一人一人が向き合い、地域に対する「もやもや」を解決してもらうことを目的に開催しているイベントだ。毎回、地域に関する「キーワード」を参加者に考えてもらっている。


「地域活性のキーワードについて、一人一人の解釈を探すっていうのをやってます。第一回は「関係人口」について。毎回1つのキーワードを設定して、ディスカッションを通して、自分なりの定義づけみたいなのを考えてもらうってことをやってます。それらをまとめて、「ルーラル辞書」みたいな感じで、公表できるようにしたいなと思って活動しています。」


ディスカッションを行う中で、様々な視点から地方の本質を見ることができて、興味深いと小菅さんは話す。


「地域活性の辞書を作ることで、実際に活動をしている人たちが地域への視野を広げるツールとしてだったり。考え方を広げられるようなものにできたらいいなと思います。」


4.若い世代の地域コミュニティーをつくりたい。

 小菅さんは高校生時代に地域で活動する中で、「若い人たちの地域コミュニティーが少ない」ということを感じたという。将来的には、地域に関心のある若者同士が交流できるオンラインサロンのようなコミュニティーを作っていきたいと話す。


「地域関係って、年齢の高い層のコミュニティーしかないんですよ。僕が高校時代に活動していた時も、全部おじさんばっかりで、毎回ビール出されてみたいな感じで。(笑)

同年代で価値観を共有できる場がなかったんですよね。なので若者同士のコミュニティーをつくりたいと思ったんです。それがルーラルラボを立ち上げた経緯の1つでもあるんです。」


5.地域の伝統と便利さを両立していくためには

 小菅さんは以前、地方の商店などを潰してしまうイオンモールは、地方を破壊する存在だと考えていた。しかし、地元にイオンモールが必要とされている現実を前に、伝統と利便性の両立が必要だと考えるようになったと言う。


「びっくりしたのは福島のいわきに行った時、実際イオンモールができたことで潰れた店はいっぱいあったのですが、イオンモールが一番のコミュニティーのハブになっていたんですよ。」


地域の伝統を維持していくためには、インターネット等を使った、地域の外への発信も必要となってくるのではないかと話す。


「僕個人の考えとしては、インターネットとかドローンとか、自動運転とかっていうのは、結構地方における多様性に貢献できると思っていて、例えば最近地方で細々とやっていた事業とかが、ネットのEC市場によって、実際に継続できるようになったっていうのもあります。」


6.正解はない。どちらが自分たちの地域にとって幸せか?

 地域の将来をどうしていきたいか、といった問いについて、正解はないと小菅さんは話す。


「正解はないんですよね。そこに住んでいる人たち1人1人が地域について考えていくことだと思うんですよ。どっちの方が自分たちにとって幸せになれるか。だから、とにかく考える人を増やしたり、考える参考になる勉強ができたり、情報共有ができる場所を作ってきたいと思って活動しています。」


私たちクリネクションの活動とも共通点の多い、ルーラルラボの取り組み。


地域活性に関心のある人たちが繋がり、地域をめぐる「もやもや」について考えるコミュニティーがいま、広がりつつあるのだ。


Rural Labo 公式Facebook


Rural Labo 公式note


Rural Labo 公式Twitter

https://twitter.com/rural_labo



​取材者

蓑田道(みのだたお)東京都港区出身・在住。
学生団体クリネクション共同代表。名古屋の情報サイト「NAGOYAPRESS」編集者。趣味は旅行、地図を読むこと。地域の再生を通して地域から社会を変えていくことを目標として活動をしている。

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